参議院選挙まえに予習しておこう。参議院選完全ガイド

参議院選挙完全ガイド:役割、仕組み、投票のポイント

参議院選挙がもうすぐ行われます。「参議院とは何か」「衆議院との違いは」「何を重視して投票すれば良いのか」など、有権者として知っておきたい情報を詳しく解説します。この記事を読めば、参議院選挙に関する基本的な知識から投票の際に考慮すべきポイントまで、幅広く理解できるでしょう。

目次

参議院とは?その役割と歴史

参議院の成り立ち

参議院は、日本国憲法の下で設置された国会の一院です。1947年5月に施行された日本国憲法により、それまでの帝国議会に代わって二院制の国会が設けられ、衆議院とともに参議院が誕生しました。

参議院の前身は貴族院です。貴族院は明治憲法下で皇族・華族・勅任議員などで構成されていましたが、日本国憲法の制定により、全議員が国民の直接選挙で選ばれる参議院へと生まれ変わりました。

初代参議院議長は松平恒雄氏で、1947年5月20日に第1回参議院議員選挙が行われました。当時の定数は250名でした。その後、数回の定数変更を経て、現在は248名となっています。

参議院の役割と特徴

参議院は「良識の府」「再考の府」とも呼ばれ、衆議院とは異なる視点から国政を審議する役割を担っています。参議院の主な特徴は以下の通りです:

  1. 任期の長さ: 参議院議員の任期は6年で、3年ごとに半数が改選されます。これにより、短期的な世論の変動に左右されない安定した審議が可能となっています。
  2. 解散がない: 衆議院が内閣の判断で解散されることがあるのに対し、参議院には解散制度がありません。これにより、国会の機能が完全に停止することを防いでいます。
  3. 継続審議: 衆議院が解散されると、そこで審議中だった法案は廃案になりますが、参議院では継続して審議できます。
  4. 緊急集会: 衆議院が解散中に緊急事態が発生した場合、参議院は緊急集会を開くことができます。

参議院は、衆議院と比べると権限は限定的ですが、法案の慎重な審議や長期的視点からの政策判断など、民主主義の健全な発展に欠かせない役割を果たしています。

衆議院と参議院の違い

構成と選出方法の違い

衆議院と参議院は、以下のような点で異なります:

  1. 定数:
    • 衆議院:465名
    • 参議院:248名
  2. 任期:
    • 衆議院:4年(ただし解散があれば任期満了前に選挙)
    • 参議院:6年(3年ごとに半数改選)
  3. 選挙制度:
    • 衆議院:小選挙区比例代表並立制(小選挙区289議席、比例代表176議席)
    • 参議院:選挙区制と比例代表制の併用(選挙区148議席、比例代表100議席)

権限の違い

両院の主な権限の違いは以下の通りです:

  1. 法案の議決:
    • 両院で可決されれば法律となりますが、衆議院で可決され参議院で否決された場合、衆議院で3分の2以上の多数で再可決すれば法律となります(衆議院の優越)。
  2. 予算の議決:
    • 予算は衆議院が先議し、参議院で否決されても、衆議院の議決が優先されます。
  3. 条約の承認:
    • 条約の承認も衆議院の優越が認められています。
  4. 内閣総理大臣の指名:
    • 両院で異なる人物を指名した場合、衆議院の議決が優先されます。
  5. 内閣不信任決議権:
    • 衆議院のみが内閣不信任決議権を持ちます。参議院には問責決議はありますが、法的拘束力はありません。

役割の違い

衆議院は「民意の府」として、より直接的に国民の意思を反映する役割を担っています。一方、参議院は「良識の府」として、長期的・多角的な視点から法案を審議する役割を果たしています。

衆議院が解散により全議員が入れ替わる可能性があるのに対し、参議院は常に半数の議員が残るため、政策の継続性を保つ役割も担っています。

参議院選挙の仕組みと投票プロセス

参議院選挙の基本構造

参議院議員の任期は6年で、3年ごとに議員の半数が改選されます。これは、議院の継続性を保つとともに国会の機能の空白化を防ぐことを目的としています。参議院は衆議院のように解散がないので規則正しく選挙が行われます。

2018年の公職選挙法の改正で、2019年の参議院選挙は、定数が「3」増えて「245」になりました。参議院選挙は3年ごとに半数が改選するため、2022年の選挙でも「3」増えて、最終的に定数は「6」増の「248」になりました。

参議院議員の定数は248人で、そのうち148人が、原則、都道府県を単位とした選挙区選挙で、100人が全国を1つのブロック(選挙区)とした比例代表選挙によって選ばれます。

選挙区選挙と比例代表選挙

参議院選挙では「選挙区選挙」と「比例代表選挙」が行われますので、有権者1人につき2回投票します。

選挙区選挙

  • 投票用紙に候補者の名前を書いて1票を投じます
  • 選挙区は、原則、都道府県を単位に設けられています
  • 1票の格差を是正するため、2016年の選挙から「鳥取と島根」「徳島と高知」をそれぞれ1つの選挙区とする「合区」が行われ、選挙区の数は45です
  • 改選される議席数は、定員が1の1人区が32、2人区が4、3人区が4、4人区が1人増えた埼玉選挙区など4、そして最も多い6人区が東京選挙区の合計74となっています
  • 選挙区選挙は、選挙区ごとに、得票数の最も多い候補者から順に改選定数までの人が当選します

比例代表選挙

  • 投票用紙に政党・政治団体の名前か候補者の個人名、いずれかを書いて投票します
  • 改選される議席数は50です
  • 政党名と個人名の票の合計が各党の得票数となり、その得票数に応じて「ドント式」と呼ばれる計算方法で議席が配分されます
  • 各党の獲得議席のなかで、どの候補者が当選するかは、原則として、個人名の票が多い順に決まります(参議院選挙は、衆議院選挙と異なり比例代表の候補者の名簿に順位がつけられていない非拘束名簿式を採用)
  • 2019年の選挙から候補者個人の得票に関係なく、あらかじめ政党が決めた順位に従って優先的に当選者が決まる「特定枠」を設けることができるようになりました

投票方法

投票所での投票

  1. 投票所(入場)整理券が各家庭に届きます(はがきの場合もあります)
  2. 投票日に指定された投票所へ行きます
  3. 受付で投票所(入場)整理券を提示します
  4. 本人確認が行われます(入場整理券を忘れた場合でも、身分証明書の提示や口頭での確認で投票可能)
  5. 選挙区選挙と比例代表選挙の2種類の投票用紙を受け取ります
  6. 記載台で投票用紙に記入します
    • 選挙区選挙:候補者名を記入
    • 比例代表選挙:政党名または候補者名を記入
  7. 投票箱に投票用紙を投入します

期日前投票・不在者投票

  • 投票日当日に投票所へ行けない場合は、期日前投票や不在者投票の制度を利用できます
  • 期日前投票は、公示日の翌日から投票日の前日までの間、市区町村の選挙管理委員会が指定した場所で投票できます
  • 不在者投票は、入院中の人や遠隔地に滞在している人などが利用できる制度です

ドント式による議席配分

比例代表選挙では、ドント式という計算方法で議席が配分されます。

ドント式は、議席配分の計算方法で、各政党・政治団体が獲得した得票数を1から順に整数で割り、その答え(商)の大きい順に議席が配分されます。

例えば、6議席をめぐって3党で争う選挙で、A党が240票・B党が180票・C党が120票獲得した場合:

  1. 各党の得票を、1、2、3と整数で割っていきます
  2. A党は、1で割ると240、2で割ると120、3で割ると80です
  3. 同じようにB党とC党についても割り算を行い、全体の答えの中で数が大きい順に1議席ずつ配分していきます
  4. この方法で6つの議席を配分すると、A党が3議席、B党が2議席、C党が1議席となります

参議院選挙で投票する際に重視すべきポイント

有権者の投票判断基準

主な判断基準

公益財団法人「明るい選挙推進協会」の調査によると、有権者が選挙区で投票した候補者の選択理由(複数回答)は以下の通りです:

  1. 候補者の属する党の政策や活動: 55.5%
  2. 候補者の政策や主張: 52.8%
  3. 候補者の人柄: 26.8%
  4. 地元の利益: 22.8%
  5. 自分と同じような世代の利益: 14.7%
  6. 候補者の属する党の党首: 11.4%
  7. 家族や知人のすすめ: 9.2%

日本経済新聞の調査でも、投票の判断基準として「政策」が44.4%と最多となっています。次いで「支持する政党・団体が推しているから」が39.0%でした。

投票先決定のタイミング

投票先を決める時期については、選挙区で投票先を決めた時期について:

  • 「選挙期間に入る前から」: 27.5%
  • 「選挙期間に入った時(公示日)」: 17.0%

公示日までに投票先を決めた人は44.5%に達しています。

年代別に見ると、公示日までに投票先を決めたのは:

  • 「18~20歳代」: 29.3%
  • 「50~60歳代」: 45.2%
  • 「70歳以上」: 61.3%

高齢者層ほど公示日までに決める人が多い傾向があります。

重視される政策課題

明るい選挙推進協会の調査結果

有権者が重視した政策課題(複数回答):

  1. 医療・介護: 52.9%
  2. 年金: 51.3%
  3. 景気対策: 45.6%
  4. 子育て・教育: 33.9%

年代別に見ると、重視する政策に優先順位の違いがあります:

  • 年金や医療・介護については、高齢者層ほど考慮する順位が高まる
  • 子育て・教育は若年者層ほど上位になる

日本経済新聞の調査結果

重視する政策項目:

  1. 景気: 47.6%
  2. 財政再建
  3. 外交・安保

「景気対策はあらゆる問題への処方箋である」(66歳、男性)、「景気がよくなれば税収増で財政再建できる」(48歳、女性)といった意見があり、景気対策と財政規律は二律背反ではなく、まずはパイを大きくすることが重要だという考えが多く見られます。

投票判断のポイント

政策重視の視点

  1. 具体性と実現可能性: 「無責任な夢を語る候補者を消去する」(65歳、男性)、「具体的な政策のない反対政党にはうんざりだ」(61歳、男性)といった意見があるように、政策の具体性や実現可能性を見極めることが重要です。
  2. 過去の実績: 公約で掲げた政策をきちんと遂行できたかどうかも重要な判断材料となります。
  3. 政策の一貫性: 選挙のたびに政策が大きく変わる候補者や政党は信頼性に欠けるという見方もあります。

政党と候補者のバランス

「選挙区は候補者の人柄などで判断し、比例代表は政党の政策で選ぶ」という考え方もあります。選挙区では地域の実情に詳しい候補者を、比例代表では政党の政策理念を重視するという判断方法です。

「個人がいくら立派な主張をしても、ひとりの力では政治は動かない」(63歳、男性)、「政治は数だ」(32歳、男性)といった意見もあり、政党としての力も重要な判断要素となります。

情報収集の方法

選挙運動に触れた媒体として、若年層ではSNSなどのネット媒体の利用が増えています:

  • 18~20歳は55.7%
  • 30~40歳代は63.9%

若年層ほど政党・候補者のホームページやSNSなどの利用が主流になりつつあり、多様な情報源から候補者や政党の主張を確認することが重要です。

参議院選挙の意義と私たちの一票の重み

参議院選挙の政治的意義

参議院選挙は、国政における重要な政治的意義を持っています。

  1. 政権の信任投票: 参議院選挙は、現政権の政策や運営に対する国民の評価を示す機会となります。特に衆議院選挙後の初めての国政選挙では、政権の中間評価としての性格が強まります。
  2. ねじれ国会の可能性: 参議院で与党が過半数を割ると、「ねじれ国会」が生じる可能性があります。これにより、法案成立のハードルが上がり、政権運営に大きな影響を与えます。
  3. 政策の継続性と修正: 参議院は3年ごとの半数改選制のため、急激な政策変更を抑制し、政策の継続性を担保する役割があります。一方で、国民の意思を反映した政策修正の機会も提供します。

一票の重みと投票率

参議院選挙の投票率は、衆議院選挙に比べて低い傾向にあります。2019年の参議院選挙の投票率は48.8%でした。これは、有権者の約半数しか投票に参加していないことを意味します。

投票率が低いということは、一票の影響力が相対的に大きくなることを意味します。例えば、100人中50人が投票する場合、1票は全体の2%の影響力を持ちますが、100人中30人しか投票しない場合、1票は全体の約3.3%の影響力を持つことになります。

また、年代別の投票率を見ると、若年層の投票率が低い傾向にあります。これは、若年層の意見が政治に十分反映されない可能性があることを示しています。

投票することの意義

  1. 民主主義の基盤: 投票は民主主義の根幹をなす行為です。国民主権を実質的に機能させるためには、有権者の積極的な参加が不可欠です。
  2. 政策への影響力: 投票を通じて、自分が支持する政策や価値観を政治に反映させることができます。投票しなければ、自分の意見を政治に届ける重要な機会を逃してしまいます。
  3. 世代間の公平性: 特に若年層の投票率が低いことは、政策が高齢者寄りになりやすい傾向を生み出します。各世代がバランスよく投票に参加することで、世代間の公平な政策形成が促進されます。
  4. 長期的な社会設計: 参議院は6年という長い任期を持つため、参議院選挙での投票は、より長期的な視点での社会設計に関わる行為と言えます。

まとめ:参議院選挙と私たちの未来

参議院選挙は、日本の政治制度において重要な役割を果たしています。「良識の府」「再考の府」としての参議院は、衆議院とは異なる視点から国政を審議し、民主主義の健全な発展に貢献しています。

参議院選挙では、選挙区選挙と比例代表選挙の2種類の投票を行います。投票の際には、候補者や政党の政策、過去の実績、人柄などを総合的に判断することが重要です。特に、政策の具体性や実現可能性、一貫性などを見極めることが、賢明な投票につながります。

また、投票は単なる権利ではなく、民主主義社会における市民の責任でもあります。一人ひとりの投票が集まることで、私たちの社会の未来が形作られていきます。特に若い世代の積極的な参加が、世代間の公平な政策形成につながります。

参議院選挙がもうすぐ行われます。この記事が、皆さんの投票判断の一助となれば幸いです。投票日には、ぜひ投票所に足を運び、あなたの一票を投じてください。それが、より良い日本の未来を創る第一歩となるでしょう。

(執筆:黒猫兄弟)

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